「相続」を「争族」にしないために (2)
弁護士 黒田充宏
※平成25年6月頃に作成したものです。内容面の正確性等にはご注意ください。
1.相続にまつわる状況の変化
(1)意識の変化
前回、相続にまつわる変化の一つとして、相続税の改正についてお伝えしました。今回は、意識の変化と法律面との変化についてお伝えします。
まず、意識の変化について、先日平成25年版の「土地白書」が閣議決定されました。
「土地・建物は両方所有したい」とする率が79.8%と12年ぶりに8割を切り、
逆に
「借家(賃貸住宅)」でも構わない」とする率が12.5%と過去最高の数値となった
ことが明らかになりました。
また、「土地は預貯金や株式に比べ有利な資産か」という問いに対しては
「そう思う」=32.9%(過去最低値)
で、
「そう思わない」(37.2%)を4年連続で下回る結果
となりました。
「持ち家と一生賃貸住宅ではどちらが有利か?」という話題が、よく雑誌などの特集でありますが、最近は不動産に執着しないという風潮が広がってきているといえると思います。そうすると、相続では、「先祖代々の土地だから、長男(または特定の人)が相続する」など不動産をいかに引き継いでいかせるかということに主眼が置かれていましたが、相続する人は特に不動産を欲しがらなくなってきている可能性が高くなってきています。
そうすると、相続財産の行き場について、自分たちが行ってきた通りでは、紛争の引き起こしてしまうかもしれません(もちろん、やはり不動産を取り合うというケースも多々あります。)。
(2)法律面の変化
皆さんは、民法900条4号の「非嫡出子の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1とする」(注1)という規定をご存じでしょうか?この規定が憲法に反しているのではないか(非嫡出子は嫡出子と比べて差別されているのではないか)と争われた事案で、非常に有名な最高裁判例があります。結論だけ述べると、この規定は、合理的理由のない差別とは言えないため合憲(つまり、非嫡出子は嫡出子の半分しか 相続できないということ)としました。この判例が、近々変更されるかもしれないのです(追記:後日、判例変更がされました。その点については別の機会に。)。
現在同じような形で、最高裁まで争われている事件があるのですが、その事件が、最高裁の大法廷に回付されました(憲法判断や判例変更を行う際には、大法廷が開かれることになっています)。ですので、今回はいよいよ判例変更がなされるかもしれません(実は、下級審では、この規定が違憲であるという判決は度々出ています。)。この事件に関しては、今月10日に弁論が行われ、あとは裁判所の判決を待つだけです。この10日には、大手新聞等のメディアはこぞって、これを大きなニュースとして取り上げています。もし、違憲判決(つまりこれは差別である)と判断された場合、今後の相続について従来通りとはいかなくなります。
なお、過去になされた遺産分割についても、再審によって覆される可能性があります(ここは非常に難しい法律問題が出てくるため、大変な騒動になります。)。
このように判例変更が行われれば、過去の相続のみならず、これから起こる相続に影響を及ぼすことは必至です。まだ、最終的な結論は出ていませんが、相続を考える上では、考慮しておかなくてはいけない方もいらっしゃるかも知れません。
そこで次号では、いよいよ相続対策について検討したいと思います。
(注1) 嫡出子とは・・・法律上の夫婦の間に生まれた子供のこと。
非嫡出子とは・・・法律上の夫婦の関係にない男女の間で生まれた子供のこと。
婚外子と言われたりします。