「相続」を「争族」にしないために (1)
弁護士 黒田 充宏
※平成25年6月に作成したので、内容の変化等にご留意ください。
1.相続にまつわる状況の変化
最近、当法人に寄せられた相続の相談中で、江戸時代から調査が必要なものが2つもありました。
時には非常に長期間にわたって問題となる「相続」ですが、この数年先の間に法律面や税金面で大きな動きがありそうです。また、「相続」に対する考え方の変化も著しいものがあります。こうした動きや変化が、「相続」で親族間に争いを生じさせてしまう(いわゆる「争族」となってしまう。)可能性があります。
そこで、「争族」となってしまうことを未然に防ぐために、その大きな動きと対策について3回にわたりお伝えさせて頂きます。今回は、まず「税金面」での動きについてお伝えします。
2.相続税控除額の減少と最高税率の上昇など
平成27年1月1日以降の相続から、相続税の基礎控除額が減額されます。相続が起きた場合、誰もが相続税を支払わなければならないのではなく、相続財産が一定額以下であれば、課税されません。簡単に言うと、その一定額のことを基礎控除額と言います。今回、この一定額が次のように引き下げられるのです。
・従来:5000万円+法定相続人×1000万円
・平成27年1月1日以降:3000万円+法定相続人×600万円
つまり、従来の6掛けになってしまうのです。
例えば、夫が亡くなってしまい、法定相続人が妻と子供2人の場合はこうなります。
・従来:5000万円+3人×1000万円=8000万円
・平成27年1月1日以降:3000万円+3人×600万円=4800万円
基礎控除額の差額は3200万円となっており、家が1件買えるくらいの差額です。
また、現状、相続税申告の割合は4%程度で、この改正によって、6%程度に上昇すると言われていますが、実は関わってくる方はもっと多いと思います。想定されるのは、
・不動産(土地・建物)を持っている方
・株式や債券、生命保険など金融資産を持っている方(特に会社経営者は注意)
・老後資金をきちんと蓄えられていた方
などでしょうか。
平均寿命は男性で79.59歳、女性で86.44歳(平成21年)となっており、持ち家があればローンも終わっている上、土地の価格も上昇するので、価格上昇は即相続税対象となるとなりかねません。
また、株式(経営者なら自社株)を持っておられる方なら、昨今の株価上昇は大きな影響を及ぼすことになります(中小企業の株式も遺産の評価に当たっては、以前より高額の評価をされてしまい、思わぬところで相続税がかかるということがありえます。)。
さらに税率も従来最高50%が、55%まで引き上げられますし、様々な変更があります。そのためご家族の状況や事業の承継形態に応じた対応が必要となります。
次回は、意識の変化と法律面の変化について記していきます。